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2015.05.28ブログで一問一答

出生前の遺伝子検査は新生児との対面をめざしたものであって欲しい

パソコンと聴診器 私は不妊の相談依頼を受けることも多いのですが、ここ数年「妊娠確定後の不安」に関するアドバイスを求められることが増えました。 中でも今回はブログ読者さまから頂いた「遺伝子検査」についての相談です。

Q. 診察時、医師から遺伝子検査を希望するか尋ねられて動揺

私は現在40歳の経産婦(出産経験のある妊婦)です。先日定期検診の際、産婦人科の主治医から遺伝子検査をするかどうか聞かれました。 全く予期していなかった質問だったのでこれだけでも驚いたのですが、直感的には必要ないと思いつつも帰宅後、夫に相談すると「受けてみたら?」と言われて、さらに動揺してしまいました。 本当は「どんな子が生まれてきても僕たちの子どもなんだから大事に育てよう。検査なんか必要ないよ」という返事を期待していたんです。でも自分自身どういう結果にしろ産むつもりなので、きっと検査を受けることは無いと思うのですが。 ただ、同じ境遇の人はどうするのかなって思って、山浦先生の一問一答に応募しました。もしよければ先生のお考えを聞かせてください。

K.O.さん(40歳・女性)

A.

先ずは御懐妊おめでとうございます。 遺伝子検査にはいくつか種類がありますが、近年主流となっているのは新出生前診断(無侵襲的出生前遺伝学的検査(むしんしゅうてきしゅっしょうぜんいでんがくてきけんさ、non-invasive prenatal genetic testing:NIPT)と呼ばれ、母体から採取した血液で胎児由来遺伝子の染色体異常を調べて、生まれてくる子供に先天性の病気があるかどうかを事前に診断します。
母体血中にある胎児由来遺伝子を調べることにより、胎児性別診断、RhD陰性妊婦での胎児のRhD血液型診断、胎児の単一遺伝子病や染色体異常の診断、さらには妊娠高血圧症候群の発症予知・胎盤機能評価の評価などを目的とする。 臨床的にすでに実用化されていたのは胎児性別診断とRhD血液型診断であったが、2011年より胎児染色体異常の診断が可能となり、医学的のみならず社会的にも大きなインパクトを与えた。 なお、検査が可能なのは21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー、13トリソミーの異常のみである。この3つ以外の染色体異常は見つけられない。このため、「診断」と呼ぶべきではないとする意見もある。

Wikipedia

今や日本では妊婦の4人に1人が35歳以上の高齢妊娠だそうです。彼女たちが自らの年齢的、体力的な不安だけでなく、新生児の染色体異常などの遺伝的な不安を抱くことは大いに理解できます。 またそういった不安に対して、授かった生命を親としてどう受け止めるのか検討するための材料となり得る遺伝子検査については純粋にすごい技術だなぁという驚嘆と、もしかすると神の領域に踏み込む可能性をも含んだ人類の叡智・科学医学の進歩に対する畏怖の念を同時にもたざるを得ません。

親になる覚悟

さて遺伝子検査を受けるべきかどうかズバリ言うと「あえて受ける必要は無い」と思いますが、それぞれの検査に対する目的によって答えは変わります。 例えば今回の相談者K.O.さんのようにハッキリと「親になる覚悟」が固まっている場合、その覚悟をパートナーと共有出来ていることを条件にすれば、遺伝子検査を怯れる必要はないでしょう。 なぜならば万一検査の結果、「胎児の染色体に異常がみつかった」としても文字通り早期発見・早期治療へと速やかに移行できる利点があり、また親として産まれてくる新生児とどのように向き合い、どのように育てていくのかを夫婦や家族で検討するための準備期間を設けることにつながるから。

遺伝子検査を受けるならば、新生児と対面することを前提にしたい

もしもK.O.さんとは逆に「親になる覚悟」が出来上がっていないようなカップルには遺伝子検査をお勧めしません。 結局は無闇矢鱈な不安ばかりが大きくなってしまい、むしろ精神的なストレスが継続するせいで胎児の発育に悪影響を及ぼしかねないからです。 さらには検査結果によっては過度に悲観して堕胎の判断材料にしてしまう恐れまであります。(※特殊な事情がある場合は別として、胎児の障がいを理由に人工妊娠中絶をすることは違法とされていますが…) 運命の子 トリソミー: 短命という定めの男の子を授かった家族の物語の著者で、千葉市で小児科・小児外科のクリニックを開業されている松永正訓医師は、次のように仰っています。
「僕は、出生前診断で陽性判断が出た場合の選択的人工妊娠中絶について、否定的な考えを持っています」とも語る。現在、簡単に検査できるとして普及している新型出生前診断に疑問を抱く。「命の選別」につながりかねないからだ。 「新型出生前診断という言葉はかっこよく聞こえますが、言い換えれば『ダウン症中絶検査法』じゃないですか。ダウン症だったら中絶したいといって検査を受ける。それは、あまりにもつらいことです。その検査を受けて、あなたの子どもは90%以上の確率でダウン症ですといわれ、さらに羊水検査を受けて確定したら、ほぼ全員が中絶に進みます」 「しかし、人工妊娠中絶がどれだけ母親にとって苦痛をともなうものか、一般の人は知らなさすぎると思います。中絶は確実に母親の心と肉体を苦しめるものです。ダウン症の子どもを生まなという生き方も苦痛でしょう。自分の子どもを中絶して幸せになれるとは思えません」

新型出生前診断で問われる"命の選別" 「13トリソミーの子」と家族に寄り添う医師、松永正訓さんに聞く

五体満足、心身ともに健康な新生児を望むのは親としてごく当たり前の気持ちです。しかし、もしも新生児に何か障がいがあったとしても、それは必ずしも「不幸」なこととは限りません。 その子や家族の人生を明るく充実したものと出来るのかどうかは、親のものの考え方や捉え方・行動によって決まるのですから。 よって私は遺伝子検査はあくまでも新生児と対面することを前提とした検査であるべきだと考えます。妊婦さんの年齢や初産かどうかなどの条件よっても発生する確率の差はあるにしろ、障がいの有無が判明するタイミングは問題ではありません。 少なくとも望んで授かった子ならば、何をおいても親はどっしり構えて、まずは「無事出産」を目指して細心の注意を払い、全力をあげなければいけないという事をご夫妻でよく話し合う必要があるでしょう。 今回取り上げたテーマは正解の無い、とてもナーバスな問題ですが、わたし個人的には科学の進歩により生命倫理までをも含む無用な選択肢が増えたという印象で、出産に至る過程において母体や胎児の命の危機などの早期発見には技術の進歩を大いに役立てて欲しいけれど、そういった事情がなければ出生前に親がアレやコレやを知る必要は無いと考えています。 振り返れば、この世に出てくる瞬間まで赤ちゃんの性別すら分からない時代だってあったんですから。

妊娠に関しては下記も参考にして下さい。

蛇足

欧州のある地域では障がいをもつ子が増えると国力の衰退につながるという発想で、積極的に出生前の遺伝子検査の受診を勧めている国もあると聞きました。 そこまで過激な思想に基いているわけでは無いにしろ、もしかすると今後の日本における遺伝子検査に対するアプローチも徐々に海外のそれに近づいていくかも知れません。 しかし私たち日本人はそんなドライな考え方をマネするのではなく、哲学や社会福祉のあり方、また環境整備などを含めてもう少し違う建設的な解決策を見出していくべきではないかと思いますが、このあたりは私の守備範囲から大きく逸脱しますので言及はここまでにしておきます。 ※今回の内容は全て山浦卓の個人的な見解です。この件に悩む人たちにとっての答えは十人十色、百人百様のケースがあります。

追記3

わが子がダウン症だったら?― 出生前診断を受けた夫妻の選択 - Yahoo!ニュース https://news.yahoo.co.jp/feature/804

追記2

みいちゃん家族になろうよ ダウン症の子、養子に迎える:朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/articles/ASK8X6CYTK8XUUPI00C.html

追記

ダウン症の人、9割が「毎日幸せ」 厚労省が当事者調査

回答した852人のうち働いている人は約6割。 「毎日幸せに思うことが多いか」の質問に「はい」が71%「ほとんどそう」が20%。米国の調査では99%が「幸せ」と回答。 一方、出生前診断の染色体異常で中絶を選択した人は94%。

(2016/11/23 朝日新聞)

松永正訓医師の著書

臨場感あふれる表現はかなりヘビーですが、このテーマに興味あるならば必読です。

その他、参考資料

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