2015.11.17他メディアへの配信記事
人は血液と血管から老いる。阿藤快さんの訃報に接して再考したこと
阿藤快さんを襲った動脈硬化と大動脈瘤
過日、俳優の阿藤快さんが大動脈破裂胸腔内出血によって急逝されたとの報道があった。 私には阿藤さんの病歴や服用薬歴の詳細を知る由もないが、大動脈破裂ということは、少なくとも動脈硬化と大動脈瘤の既往があったものと推測できる。 動脈硬化がすすむと大動脈の弱い部分が血圧に耐えられなくなり膨らみ始める。これが瘤(こぶ)のようになった状態を大動脈瘤と呼ぶ。 さらに膨らみが大きくなり瘤の壁が薄くなることで破裂して大出血を起こすと、身体の機能が停止して死に至る。持続した背部の激痛は破裂の前兆だった
横隔膜より上にある大動脈にできる動脈瘤である「胸部大動脈瘤」は健康診断などで、偶然みつかる事が多く、特に持続する胸背部の痛みは破裂の前兆として要注意だ。 また症状が進むと咳や喘鳴、喉枯れ、呼吸困難、嚥下障害も発現することがある。(参考:メルクマニュアル、からだのしくみ事典)アンチエイジングの本質
私がいつも相談者に伝えている事だが、人の健康を司る第一の「ものさし」は血液と血管である。(参照記事) 理由はよく考えれば非常に単純で、人間を構成している約60兆個の細胞の一つ一つを滋養しているのが血液によって運ばれる新鮮な酸素であり、実際の運び役を担っているのが赤血球であることだ。 赤血球の数は約29兆個。つまり個数ベースで考えると人の細胞のおよそ半分が赤血球ということになる。赤血球は酸素を運ぶ仕事以外は一切しないので、新鮮な酸素を全身に運搬するということがどれほど重要な事なのかが分かる。 そしてその通り道である血管のしなやかさも忘れてはいけない。動脈硬化は大動脈だけでなく、もっと細いサイズの血管でも生じるのだが、赤血球は直径が7〜8μm(1㎛=1000分の1mm)。平べったくて、真ん中がつぶれたあんぱんのような形をしている。 毛細血管の中でもとりわけ細い微小血管の内径は1~3μm程度と赤血球の方が大きいので、普段は自身の形を変えながら細い血管を通過している。これは「赤血球変形能」と呼ばれている。 最近では「糖化」や「炎症」などというキーワードも注目されているが、つまりは血液の質の低下こそが「老化」の本質であることに他ならない。人は血液・血管から老いる
赤血球変形能が低下したり動脈硬化を助長させて大動脈の異常だけでなく微小循環障害をも引き起こす最大の原因はなんといっても加齢や過労、睡眠不足、脂質の多い食習慣、喫煙などだ。 芸能の世界に身を置き、厳しい競争社会で凌ぎを削りながら人気を維持するべく、多忙の毎日を過ごされたであろう阿藤さんに限らず、お仕事や家事、育児に追われる多くの世代に当てはまる項目が多いのではないか。 血液と血管のケアを考えるならば、先ずは改善できる生活習慣ないかどうか見直しをしたり、適度な運動を心がけることが肝要だろう。 また近年では流通しているもののうちのごく一部とはいえ、赤血球変形能を改善するはたらきや、血管内皮の過酸化脂質を除去したり、活性酸素によってついた血管壁の傷を修復するはたらきなどが科学的に明らかにされた食材・食品もある。 このため私の薬局でも漢方薬の他、信頼の置ける研究機関や学会等で論文として発表・確認されたものに限り、健康相談の依頼者に対して情報の提供をしている。参考記事
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