2015.09.08ブログで一問一答
青い風邪に葛根湯、赤い風邪に銀翹散。初期風邪の漢方薬を使い分ける理由
【画像:銀翹散の薬味の一種、『連翹(レンギョウ)』=清熱解毒(熱を冷ましながら解毒=抗菌・抗ウイルス)作用を示す】
この「ブログで一問一答」カテゴリは、読者の皆様からご応募いただいた質問内容に山浦卓がサクサクと回答していく企画です。
Q. 風邪の引き始めの漢方薬の選び方は?
I.Y.です。いつもお邪魔してしかも長居してすみません笑 質問なのですがつい先日の事。喉がイガイガして痛みと、少し咳もあったので風邪かなと思い、サントさんへ行ったら「銀翹散」という薬を勧められました。 風邪の引き始めの漢方薬といえば葛根湯のイメージが強かったのですが、なぜ今回は銀翹散だったのでしょうか? この前はあまり時間が無かったのでそのまま持ち帰り服用したところ、翌日には症状もなくなり結果オーライだったのですが、ふと疑問に思いこちらに応募してみました。 よろしくお願い致します。I.Y.さん(40代・女性)
A. 長嶋茂雄さんと王貞治さんみたいな関係?
I.Y.さん、毎々お世話になっております。またブログのご講読と今回はご質問まで下さり本当にありがとうございます。 前回お出しした『銀翹散(ギンギョウサン)』という漢方薬は、出典とされる「温病条弁」という書物が当時鎖国中の日本に入って来なかったため、古くからある葛根湯ほどの名声を得られなかった、少し陰のある(?)薬ですが、実は葛根湯と並んで風邪の初期に用いる超メジャーな漢方処方の一つです。 葛根湯を長嶋茂雄さんに例えれば、銀翹散は王貞治さんみたいな関係でしょうか?または松田聖子さんと中森明菜さん。(どっちにしても例えが古いですね笑外感風熱タイプの風邪に銀翹散。
コホン。今回はそんな2枚看板のうち、銀翹散にスポットを当ててみましょう。葛根湯については別の機会に詳しく書きます。 早速話を戻して、初期の風邪についてですが、次の2つに大きく分けると考えやすいです。- ゾクゾクするような寒気や凝って震えるような感覚、粘り気のない透明な鼻水を示すような『外感風寒』タイプ=青い風邪
- 喉の腫れと痛み、発熱、頭痛、節々の痛みなど示す『外感風熱』タイプ=赤い風邪
銀翹散(温病条弁)とは?
- 組成:金銀花6 連翹6 薄荷3 牛蒡子6 荊芥6 淡豆豉3 竹葉6 芦根4 桔梗4 甘草3 羚羊角0.5
- 効能:疏散風熱、清熱解毒
- 主治:外感風熱
- 臨床応用:発熱、口渇、咽痛、咳嗽、発疹、口内炎、花粉症(特に目の痒み、喉のヒリヒリ感、粘膜の乾燥)
銀翹散は花粉症にも有効。
組成にある金銀花、連翹、薄荷、牛蒡子は銀翹散の主薬で、辛涼解表・疏散風熱という性質を示し、抗炎症作用を持つので春・秋問わず、花粉症による目のかゆみ、充血、喉の痛みに用いることも。銀翹散の抗炎症作用、抗ウイルス作用を応用してタミフルと併用も。
また近年は、抗菌作用や抗ウイルス作用も重用されて、鳥インフルエンザ(H5N1)やSARS(重症急性呼吸器症候群)、新型インフルエンザ(H1N1)の流行で、「銀翹散」の効力が注目されるようになってきました。 九州看護福祉大学元教授の江頭洋祐医学博士は以前、「新型インフルエンザが疑われたとき、日本の医療機関では、抗ウイルス薬のタミフル、もしくはリレンザが処方されている。医師によってはさらに抗生剤、抗菌剤、解熱剤等を追加する処方が多くなる。 早めのタミフル服用は、特に新型インフルエンザの重症化を防ぐうえで効果があるのは確かだが、統合医療的な立場でいえば、インフルエンザの治療には、タミフルでウイルスの増殖を止め、銀翹散などの風熱薬を組み合わせて使うのが一番効果的ではないかと思う」と述べられています。当薬局でも。
実際、当薬局でも最初から喉がヒリヒリしていたりムズ痒い、頭痛、舌の赤みなど「熱」の症状を示す風邪の場合は、冷えた身体を温める葛根湯ではなく銀翹散を第一選択として用います。※実際に発熱しているかどうかを目安にするわけではありません。 また上記のように、目の症状の強い花粉症の方には特に抗アレルギー作用を示す坂元のくろず(1年醗酵熟成・赤箱)や、米黒酢もろみ原末「諸味(しょみ)」との併用が人気です。効果も比較的早くて便利な方剤ですよ。 ただし、銀翹散は保険適応外の薬なので病院では出してもらえません。 この記事を読まれて、もしかしたら自分に合うかも?とか、やはりどの漢方薬を選べばよいか分からない……? などと思われた方は、こちらからお問合せください。その他、これらの記事も参考にしてください。
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