2013.12.20漢方知識
漢方医学からみる冬と健康3―乾燥肌・敏感肌と皮膚炎
冬になって空気が乾燥して、多くの方々は皮膚の乾燥が感じています。 実際、皮膚が乾燥しているのに、感じない方も大勢います。
皮膚の一番表面には皮脂膜があり、その下に角質層があります。角質層には皮脂、天然保湿因子、角質細胞間脂質があり、皮膚を乾燥から守るために重要な働きをしています。
冬に入り、空気が乾燥して皮膚の表面が乾燥してくると皮脂膜を保てなくなり皮膚の水分が蒸発しやすくなります。また、角質層の保湿因子が減少して皮膚が水分を保てなくなり乾燥肌を引き起こします。乾燥した皮膚では角質層の真下にかゆみを伝達するC線維という知覚神経がのびてきているため、外部からの軽度の刺激にも敏感に反応して容易にかゆみが誘発されますので、保湿することは皮膚を乾燥から守ると同時にかゆみを予防するためにもとても大切です。
漢方医学からみれば、寒い冬には陽気が収斂し、皮膚に気血の循環が乏しくなりやすく、皮膚のうるおいが足りなくなります。外部“燥邪”(乾いた空気)と内生“燥邪”(循環不足による保湿因子の減少)の総合作用で、“燥邪”は“風邪”(敏感肌・痒み)を生じてくるわけです。 また、代謝の低い老人や婦人には、根本的な腎気が弱いため、皮膚の再生力が弱く、潤いがより足りなくなりやすいため、乾燥肌や敏感肌や皮膚炎がより出やすいとなります。
中医学には“燥生風”という言葉あります。冬には外気が寒い、空気乾燥、乾燥肌の上に、さらに暖房やお風呂で温めることで、皮膚に温暖や乾燥や静電気などの刺激により、かゆくなりやすいのです。またさらに掻くことで、皮膚の表層を書き壊すため、より敏感、より痒くなります。結果的に皮膚炎が生じることになります。皮膚炎の段階になれば、漢方医学では、“燥火が生じている”と称します。乾燥肌がアトピー性皮膚炎の一要因のため、冬に悪くなるアトピー性皮膚炎も少なくありません。
“気・血・水”、また“燥・風・火”から、皮膚乾燥・乾燥肌・皮膚炎の漢方薬治療を見ると非常にわかりやすくなります。
気:腎気不足、代謝低下からみれば、補腎薬の漢方薬地黄・山薬・山茱萸・沢瀉などが有効です。
血:補血剤の漢方薬当帰・地黄・芍薬・川芎(四物湯)の基本ベースで治療するとよいです。
水:水分代謝をよくする黄耆・茯苓・沢瀉などを用いることもある。
燥:多くは血を補って、血燥を治療する。やはり、当帰・地黄・芍薬・何首烏・甘草などの漢方薬がよいですね。
風:防風、荊芥、シツリシなどで風を去り、かゆみを止めることになります。
火:皮膚の発赤・湿疹(皮膚炎)、強い掻痒などには、黄連・黄芩・山梔子・黄柏・苦参・石膏などの清熱解毒の漢方薬を用いることが必要となります。
乾燥肌の治療や予防には保湿が大切だと思います。
保湿剤としては一般的にはワセリン、尿素入り外用剤、ヘパリン類似物質含有外用剤があり、剤形には軟膏、クリーム、乳液、ローションがあります。
保湿剤は強くすりこまず、やさしくなでるように塗ると刺激になりにくいです。
また、日常生活上でも皮膚を清潔に保ち、乾燥を防ぐ工夫が必要です。
お風呂のお湯の温度は高すぎないようにし、長湯を避けることも注意すべきです。
そのほか、適当に水分をとり脱水を防ぐことも、適当な脂肪やコラーゲンを含む食品をとることも、乾燥肌に役に立ちます。
漢方医学からみる冬と健康1
漢方医学からみる冬と健康2
富士堂東洋医学研究所 所長 許 志泉
皮膚の一番表面には皮脂膜があり、その下に角質層があります。角質層には皮脂、天然保湿因子、角質細胞間脂質があり、皮膚を乾燥から守るために重要な働きをしています。
1.外部“燥邪(そうじゃ)”―内生“燥邪”―“風邪(ふうじゃ)”
冬に入り、空気が乾燥して皮膚の表面が乾燥してくると皮脂膜を保てなくなり皮膚の水分が蒸発しやすくなります。また、角質層の保湿因子が減少して皮膚が水分を保てなくなり乾燥肌を引き起こします。乾燥した皮膚では角質層の真下にかゆみを伝達するC線維という知覚神経がのびてきているため、外部からの軽度の刺激にも敏感に反応して容易にかゆみが誘発されますので、保湿することは皮膚を乾燥から守ると同時にかゆみを予防するためにもとても大切です。
漢方医学からみれば、寒い冬には陽気が収斂し、皮膚に気血の循環が乏しくなりやすく、皮膚のうるおいが足りなくなります。外部“燥邪”(乾いた空気)と内生“燥邪”(循環不足による保湿因子の減少)の総合作用で、“燥邪”は“風邪”(敏感肌・痒み)を生じてくるわけです。 また、代謝の低い老人や婦人には、根本的な腎気が弱いため、皮膚の再生力が弱く、潤いがより足りなくなりやすいため、乾燥肌や敏感肌や皮膚炎がより出やすいとなります。
2. “燥から風・火”――乾燥肌から敏感肌、乾燥肌から皮膚炎
中医学には“燥生風”という言葉あります。冬には外気が寒い、空気乾燥、乾燥肌の上に、さらに暖房やお風呂で温めることで、皮膚に温暖や乾燥や静電気などの刺激により、かゆくなりやすいのです。またさらに掻くことで、皮膚の表層を書き壊すため、より敏感、より痒くなります。結果的に皮膚炎が生じることになります。皮膚炎の段階になれば、漢方医学では、“燥火が生じている”と称します。乾燥肌がアトピー性皮膚炎の一要因のため、冬に悪くなるアトピー性皮膚炎も少なくありません。
3. 皮膚乾燥・乾燥肌・皮膚炎と漢方薬治療
“気・血・水”、また“燥・風・火”から、皮膚乾燥・乾燥肌・皮膚炎の漢方薬治療を見ると非常にわかりやすくなります。
気:腎気不足、代謝低下からみれば、補腎薬の漢方薬地黄・山薬・山茱萸・沢瀉などが有効です。
血:補血剤の漢方薬当帰・地黄・芍薬・川芎(四物湯)の基本ベースで治療するとよいです。
水:水分代謝をよくする黄耆・茯苓・沢瀉などを用いることもある。
燥:多くは血を補って、血燥を治療する。やはり、当帰・地黄・芍薬・何首烏・甘草などの漢方薬がよいですね。
風:防風、荊芥、シツリシなどで風を去り、かゆみを止めることになります。
火:皮膚の発赤・湿疹(皮膚炎)、強い掻痒などには、黄連・黄芩・山梔子・黄柏・苦参・石膏などの清熱解毒の漢方薬を用いることが必要となります。
4. 冬には保湿しましょう
乾燥肌の治療や予防には保湿が大切だと思います。
保湿剤としては一般的にはワセリン、尿素入り外用剤、ヘパリン類似物質含有外用剤があり、剤形には軟膏、クリーム、乳液、ローションがあります。
保湿剤は強くすりこまず、やさしくなでるように塗ると刺激になりにくいです。
また、日常生活上でも皮膚を清潔に保ち、乾燥を防ぐ工夫が必要です。
お風呂のお湯の温度は高すぎないようにし、長湯を避けることも注意すべきです。
そのほか、適当に水分をとり脱水を防ぐことも、適当な脂肪やコラーゲンを含む食品をとることも、乾燥肌に役に立ちます。
漢方医学からみる冬と健康1
漢方医学からみる冬と健康2
富士堂東洋医学研究所 所長 許 志泉
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